汚染防止

SIIは、環境方針において、「法令及び同意したその他の要求事項の遵守はもとより、環境リスクの低減と汚染の予防に努める」および「使用する化学物質および製品への含有化学物質の適切な管理を徹底する」としています。
化学物質の不適切な管理による環境汚染をはじめ、想定される環境リスクを洗い出し、汚染の防止に努めています。

化学物質管理

考え方・方針

化学物質は、不適切な取り扱いや装置の故障などにより、環境への汚染や人的被害を伴う事故の発生などのリスクがあります。これらリスクを低減し回避するためには、化学物質を正しく安全に管理する体制や手順の構築が必要です。また、化学物質の使用量の削減や、より安全性の高い化学物質への代替なども重要です。

そこで、化学物質を使用しているSIIの各拠点では、化学物質の適正な管理や削減活動を行っています。具体的には、社内講師による化学物質管理教育、漏洩などの緊急事態への対応訓練、日常点検や内部監査での管理状況の確認、そして有資格者の育成などの施策を継続的に実施することで、適正な取り扱い方法や管理を徹底しています。さらに、代替物質や使用量削減方法の情報共有などにより、使用量の削減を進めています。

2023年度の総括

環境活動の年間計画に基づき、各事業所では化学物質管理の教育や化学物質の漏洩を想定した緊急事態訓練の実施、内部監査などを通じて現場確認を行い、リスクの低減を図りました。
化学物質の使用については可能な限り少ない量での使用に努めています。2023年度の製造工程におけるSIIが定めた管理対象物質※1の排出量は15トンで、前年度実績より約1.7トン削減しました。また、PRTR法※2対象物質の取扱量は46.2トンで、こちらも前年度より2.9トン削減しました。

※1SIIの国内拠点では製造工程で使用する化学物質の中で、PRTR法対象物質に加えSIIで独自に指定した自主管理物質(23物質)とVOC(揮発性有機化合物:100物質)を排出量削減の管理対象としています。

※2PRTR(Pollutant Releaseand Transfer Register 化学物質排出移動量届出制度)化学物質の取扱量、環境中への排出量、廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量などを把握・集計し、公表する制度。企業はこの制度の対象となる化学物質について集計し、行政機関に年に1回届け出る。

化学物質漏洩対応訓練の様子(Seiko Instruments Technology (Shanghai) Inc.にて)
化学物質漏洩対応訓練(Seiko Instruments Technology (Shanghai) Inc.)

PRTR法対象物質の実績(取扱量・排出量)

■2023年度PRTR調査結果(国内拠点のPRTR対象物質のみ)

PRTR

※端数処理の関係で合計が100%にならない場合があります。


(単位:kg)
化学物質名 取扱量 排出 移動 リサイクル 消費 除去処理
①大気への排出 ②公共水域への排出 ③土壌への排出 ④事業所内埋立 ⑤下水道へ移動 ⑥廃棄物としての移動 ⑦有価物としての移動 ⑧製品として移動等 ⑨分解・反応等
エチルベンゼン 526 141 0 0 0 0 385 0 0 0
キシレン 2,704 169 0 0 0 0 638 0 0 1,897
コバルト及びその化合物 9,699 0 0 0 0 0 10 348 9,340 0
トルエン 1,950 1,130 0 0 0 0 658 0 162 0
ニッケル化合物 420 0 0 0 0 0 0 0 420 0
フェノール 1,418 213 0 0 0 0 1,134 0 0 71
ふっ化水素及びその水溶性塩 11,146 3 6 0 0 0 10,580 0 0 557
マンガン及びその化合物 7,083 0 0 0 0 0 1,693 0 5,390 0
メチルナフタレン 1,650 8 0 0 0 0 0 0 0 1,642
1,2-ジメトキシエタン 239 0 0 0 0 0 0 0 239 0
トリメチルベンゼン 2,748 32 0 0 0 0 680 0 0 2,036
鉛及びその化合物 1,890 0 0 0 0 0 1,511 0 379 0
N-メチル-2-ピロリドン 4,726 876 0 0 0 0 3,850 0 0 0
合計 46,197 2,571 6 0 0 0 21,139 348 15,930 6,203

※端数処理の関係で合計が合わない項目があります。

オゾン層破壊物質への対応

SIIでは、オゾン層破壊物質である特定フロンや代替フロンの製造工程での使用は全廃していますが、冷凍機器、空調機器などの冷媒として保有しています。国内拠点ではフロン排出抑制法にのっとり、廃棄時に加え、簡易点検や定期点検などを通じて、使用時における漏洩防止に努めています。

環境リスクの低減

環境リスクの考え方

環境リスクの把握と未然防止には、何をリスクとして捉えるか、また、そのリスクが発生した際の環境への影響、リスクの未然防止策、そして発生した際の対応方法を正しく理解していることが重要です。
SIIでは、これらの環境リスクの把握と未然防止については環境教育や内部監査を通じて啓発しています。
各拠点では、ISO14001に基づきリスクの洗い出しや評価を行っています。洗い出したリスクには、
 ・有害物質の流出による水質、大気、土壌などの汚染リスク
 ・自然災害に伴う汚染リスク
 ・水に関わるリスク
 ・各国の環境法規制からの逸脱のリスク
など、さまざまなリスクがあります。
また、気候変動によるリスクは、親会社のセイコーグループ(株)によるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示への対応の中で把握しています。

水リスク

環境リスクへの対応策

リスクの低減には、未然防止策を講じた上で、日常点検や緊急事態発生時の対応訓練などを行っています。

■日常点検

SIIは排水処理施設、ボイラー、空調設備、薬品タンクなど、環境関連施設・設備を有しています。これらの定期的な点検や清掃を実施し、故障やトラブルを未然に防いでいます。

ターボ冷凍機の運転データ確認
ターボ冷凍機の運転データ確認

■緊急事態の訓練

SIIの各拠点では環境上の緊急事態を想定し、その対応策やコミュニケーションに関する手順書を整備しています。 定期的に手順書に基づいた緊急事態対応訓練を実施し、手順書の有効性を確認すると同時に、汚染の拡大防止の方法を実践で習得しています。

緊急時対応訓練の様子
漏洩に対する対応訓練

製品含有化学物質管理

EUが先駆けとなって製品に関連した化学物質規制の強化は、アジア地域を始め世界各国に拡大しています。
SIIでは、規制によって禁止されている物質はもちろん、人体や環境に有害性が懸念されている物質についても管理対象物質と定めて、製品への含有禁止や削減に取り組んでいます。 製品に携わる事業部門では管理体制を構築し、削減活動の推進と定期的な分析などにより製品への含有の未然防止を図っています。

EUのRoHS指令※1では、2019年7月から4物質のフタル酸エステル類が制限物質として追加されました。SIIでは、2019年5月に指令対象のEU向け製品は完了していますが、すべての製品も代替品の切り替えを順次進めています。
また、2021年7月期限のSIIに関連する適用除外の延長申請に対して欧州委員会から委託されたコンサルタントから、最終報告書が2022年1月に公表されました。最終報告書では除外項目により申請された延長期限の短縮や特定製品のみに適用されるなど条件が厳しくなっています。今後は、EU委員会などで審議され官報の公布となりますが、現在の除外内容より厳しくなることが考えられます。※2

SIIでは適用除外は永遠に継続されるものではないとの認識に立ち、新製品では鉛を含有しない材料を使用した製品開発、既存製品においては一部の材料については代替の可能性を探る試験を継続的に実施し、良好な結果が得られた製品では代替を実現しています。
今後も、適用除外の動向を踏まえ、また、環境負荷、経済的な観点も考慮しながら代替化に向けての技術開発に取り組んでいきます。

REACH規則※3では、製品に含まれる高懸念物質※4(SVHC)の含有状況により、お客様などへの情報伝達やEUへの出荷数量によりEU当局への届出義務があります。SVHCは毎年、物質が新規に追加され、2024年4月時点で240物質となっています。
SIIでは継続的に含有状況を調査し、その結果を踏まえて、義務を果たしていくと同時に削減と代替活動を進めていきます。

欧米からPFAS※5を規制する法案が次々に公表され、米国ではPFAS含有製品の届出などが要求される事から、PFASの含有の有無や含有量などを把握することが必要になってきました。PFASの種類と用途は多種多様でありますが、法案の動向を注視しながら適宜調査を実施し対応していきます。

※1 RoHS指令:電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令。制限物質は鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE。2019年7月22日からDEHP、DBP、BBP、DIBPが制限物質として追加された。

※2 延長承認:再期限日や条件を設定される。 延長否認:12~18ヶ月の猶予後失効。 期日までに結論が出ない場合:決定するまで期限は延長される。

※3 REACH規則:EUにおける化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規則。

※4 高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concern):REACH規則の付属書XIV「認可対象物質」となる候補物質。その物質は「候補リスト(Candidate list )」に収載される。

※5 PFAS:ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物の総称
PFASの種類は12,000種以上あるといわれている。PFASの中でPFOS、PFOA、PFHxSは既に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)において廃絶物質になっており、日本においても「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)により、製造や製品への使用は禁止されている。

環境コンプライアンス