気候変動
「脱炭素社会」の実現に向けて、企業が果たすべき役割や責任はますます大きくなっています。同時に、自然災害の多発など、気候変動による事業上のリスクは年々高まってきています。
SIIは、ものづくりの現場での省エネ活動はもとより、各事業会社が提供する製品・サービスにいたるまで、全事業活動を通じて温室効果ガスの排出量削減に努めています。これらの活動を継続しながら、再生可能エネルギー導入など、脱炭素に向けた取り組みをさらに強化しています。
長期目標
2023年11月、親会社のセイコーグループ株式会社は、温室効果ガス排出量削減を前倒ししてすすめる長期目標に改定しました。SIIはこの目標に準拠し脱炭素社会の実現に取り組んでいます。
【温室効果ガス排出量削減目標】※
2030年度
Scope1、22022年度比で42%削減
Scope32022年度比で25%削減 対象:カテゴリ1、11
2050年度
ネットゼロを目指す
※ SBTi(Science Based Targets initiative)が運営・推進する、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量の削減目標であるSBT (Science Based Targets)の「1.5℃水準」を踏まえています
2022年度の総括
温室効果ガス排出量削減には、CO2、およびCO2以外の温室効果ガスも対象に「省エネ活動」、「再生可能エネルギーの導入」、「バリューチェーンでの削減」を主軸に取り組んでいます。また、製品・サービスについてはグリーン商品制度の中で省エネ型製品の創出に注力しています。
省エネ活動では、各種設備の効率的な運用管理、高効率設備への設備投資、身近な省エネ活動などを推進しています。これらの活動は継続的に取り組むことが必要だと考えています。
再生可能エネルギーには複数の種類や手段がありますが、事業所の立地、特性に応じた最適な方法を採用することが肝要だと考えています。
これらの取り組みにより2022年度は国内の生産拠点ではエネルギー消費量としては削減できた一方で、フロン漏洩量の増加などにより温室効果ガス排出量はわずかに増加しました。海外の生産拠点では、温室効果ガス排出量は大きく削減しました。これは再生可能エネルギー使用の拡大や生産減少の影響によるものです。
海外拠点のSeiko Instruments(Thailand)Ltd.では太陽光発電の導入を拡大しました。国内拠点では、仙台事業所に続きPPA※の採用を検討しています。PPA※には複数の種類がありますが、事業所の特性に応じた最適な方法を採用していく予定です。
また、TCFD提言に基づく情報開示やScope3の算出にはセイコーグループの一員として継続的に取り組みました。
※ PPA:Power Purchase Agreement(電力購入契約)の略
国内拠点 温室効果ガス排出量
国内拠点のGHG排出量 27,930 tーCO2 | 前年度比 +0.2% 46 tーCO2増加 |
海外拠点 温室効果ガス排出量
海外拠点のGHG排出量 28,708 tーCO2 | 前年度比 -12.4% 4,052 tーCO2削減 |
- SIT:Seiko Instruments (Thailand) Ltd.
- DSI:大連精工電子有限公司
- SITS:精工電子技術(上海)有限公司
■凡例
■Scope別温室効果ガス排出量【国内拠点】
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 3,585 | 3,584 | 3,172 | 3,409 | 3,327 |
Scope2 | 38,952 | 38,781 | 25,527 | 24,476 | 24,603 |
合計 | 42,538 | 42,365 | 28,699 | 27,885 | 27,930 |
※端数処理の関係で合計が合わない項目があります。
■CO2排出係数の見直しに伴い、2019年度以前のCO2排出量も再算出しています。
*電気は、温対法「電気事業者別排出係数」を使用
*燃料は、温対法「燃料種別の発熱量」、「燃料の使用に関する排出係数」を使用
*冷温水は、供給業者提供の排出係数を使用
*2020年度よりテナント、社用車なども集計対象
*使用量が特定できない店舗、倉庫などは、床面積から電力量を推定
■2022年度は、フロン漏洩によるHFCの排出を含んでいます。製造工程でのHFC、PFC、SF6、NF3は管理対象としていますが、排出はありませんでした。
■Scope別温室効果ガス排出量【海外拠点】
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 427 | 473 | 464 | 757 | 728 |
Scope2 | 48,300 | 47,334 | 29,708 | 32,003 | 27,980 |
合計 | 48,727 | 47,807 | 30,173 | 32,760 | 28,708 |
※端数処理の関係で合計が合わない項目があります。
■CO2排出係数の見直しに伴い、2019年度以前のCO2排出量も再算出しています。
*電気は、IEA「Emissions Factors」を使用
*燃料は、温対法「燃料種別の発熱量」、「燃料の使用に関する排出係数」を使用
*使用量が特定できない店舗、倉庫などは、床面積から電力量を推定
■エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガスの排出量は含みません。(管理対象外)
■Scope別温室効果ガス排出量【国内拠点・海外拠点合計】
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 4,012 | 4,057 | 3,636 | 4,166 | 4,055 |
Scope2 | 87,253 | 86,115 | 55,235 | 56,479 | 52,583 |
合計 | 91,264 | 90,172 | 58,872 | 60,645 | 56,638 |
※端数処理の関係で合計が合わない項目があります。
■ Scope3 温室効果ガス排出量
カテゴリ | 項目 | GHG排出量 (t-CO2) |
% |
---|---|---|---|
カテゴリ1 | 購入した製品・サービス | 110,658 | 61.8% |
カテゴリ2 | 資本財 | 12,104 | 6.8% |
カテゴリ3 | Scope1,2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 8,800 | 4.9% |
カテゴリ4 | 輸送、配送(上流) | 10,735 | 6.0% |
カテゴリ5 | 事業活動から出る廃棄物 | 2,001 | 1.1% |
カテゴリ6 | 出張 | 982 | 0.5% |
カテゴリ7 | 雇用者の通勤 | 2,474 | 1.4% |
カテゴリ8 | リース資産(上流) | 122 | 0.1% |
カテゴリ9 | 輸送、配送(下流) | 56 | 0.0% |
カテゴリ10 | 販売した製品の加工 | 184 | 0.1% |
カテゴリ11 | 販売した製品の使用 | 30,552 | 17.1% |
カテゴリ12 | 販売した製品の廃棄 | 431 | 0.2% |
カテゴリ13 | リース資産(下流) | - | - |
カテゴリ14 | フランチャイズ | - | - |
カテゴリ15 | 投資 | - | - |
合計 | 179,099 | 100.0% |
■ 再生可能エネルギーの導入拡大
タイのSeiko Instruments(Thailand)Ltd.では継続的に太陽光発電を導入しています。2022年はGateway工場にて建屋の屋根に太陽光パネルを設置し、2023年2月より太陽光発電システムの稼働を開始しました。Seiko Instruments(Thailand)Ltd.はSIIグループの中で温室効果ガス排出量が一番多い事業会社です。今後も計画的に太陽光発電を導入し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。
■ Seiko Instruments(Thailand)Ltd.がGreen Industry Level 4に認定
Seiko Instruments(Thailand)Ltd.の2つの工場ではタイ国工業省が主催するGreen Industry ProjectにおいてLevel 4の認定を受けました。Green Industry Projectは、環境問題や社会問題に対する産業界の意識向上と持続可能な産業の発展を目指した制度で、環境への貢献度によりLevel 1からLevel 5までの5段階で認定されます。Seiko Instruments (Thailand) Ltd.では環境マネジメントシステムに基づいた継続的な環境活動が認められ、2018年にLevel 3(Green System)を取得しました。次のステップであるLevel 4(Green Culture)では、企業文化として、工場で働くすべての人が環境および社会への責任を持ち行動することが定着していることが求められています。Seiko Instruments(Thailand)Ltd.ではLevel3の取得後も社員が一丸となってLevel 4(Green Culture)認定を目指してさまざまな活動に取り組んできました。審査員からは「社員ひとり一人の環境に対する意識が高く実践できている」と高い評価をいただきました。
■ LED化の推進
SIIの各事業所では計画的に照明のLED化を推進しています。
エスアイアイ・クリスタルテクノロジー(株)では2019年より4カ年計画で天井照明のLED化を推進してきました。2022年度で完了となり、4年間で1150台を交換しました。
【2021年度の事例】
■ 再生可能エネルギーの導入
仙台事業所は、再生可能エネルギーを導入し、2022年3月より運用を開始しました。芙蓉総合リース(株)との電力購入契約(PPAサービス)によるもので、仙台事業所の工場の屋根に、約760kWの太陽光発電設備を設置、太陽光により発電したグリーン電力を仙台事業所が利用しています。仙台事業所はマイクロ電池や小型磁石、高機能金属製品などの製造を行っており、SIIの国内拠点では温室効果ガス排出量が一番多い事業所です。SIIでは今後も計画的に再生可能エネルギーを導入し脱炭素に向けた取り組みを加速していきます。
タイのSeiko Instruments(Thailand)Ltd.のNavanakorn工場では、工場敷地に太陽光パネルを設置し、2021年6月より太陽光発電システムの稼働を開始しました。その後、同じく敷地内に太陽光パネルを増設し、2021年10月からは計1.7MWp規模の発電を開始しています。Seiko Instruments(Thailand)Ltd.はSIIグループの中でCO2排出量が一番多い事業会社です。今後も計画的に太陽光発電を導入し、CO2排出量の削減に取り組んでいきます。
■ LED化の推進
SIIの各事業所では計画的に照明のLED化を推進しています。
エスアイアイ・クリスタルテクノロジー(株)で2019年より4カ年計画でLED化を推進しています。2021年度は292本の蛍光灯を交換しました。
■ 設備更新
タイのSeiko Instruments(Thailand)Ltd.は「省エネ・改善プロジェクト」を展開しています。その一環で2021年度は設備の更新や運用改善に取り組みました。Navanakorn工場ではオフィスエリアの空調機を更新し、年間約55,000kWhの電力使用量を削減しました。Gateway工場ではチラーの熱交換用フィンコイルを変更することで年間約360,000kWhの電力使用量の削減につながりました。
今後も再生可能エネルギーの活用と共に、省エネ活動を推進していきます。
【2020年度の事例】
■ 再生可能エネルギーの導入
タイのSeiko Instruments(Thailand)Ltd.のNavanakorn工場では、工場敷地に太陽光パネルを設置し、2021年6月より太陽光発電システムの稼働を開始しました。今回の規模は0.7MWpになります。Seiko Instruments(Thailand)Ltd.はセイコーインスツルグループの中でCO2排出量が一番多い事業会社です。今後も計画的に太陽光発電を導入し、CO2排出量の削減に取り組んでいきます。
■ エネルギー効率向上プロジェクトへの参加
Seiko Instruments(Thailand)Ltd.のGateway⼯場では、代替エネルギー開発・効率局(以下、効率局)が主催する「エネルギー効率向上プロジェクト」に参加しました。このプロジェクトは、効率局が⼯場におけるエネルギー効率基準を設定するにあたり、企業に調査協⼒を求めるものです。Gateway⼯場は、効率局によるチラーの電⼒使⽤量調査などの実地調査に協⼒しました。効率局からはプロジェクト参加に対し感謝状が贈られました。
【2019年度の事例】
■ Seiko Instruments(Thailand)Ltd.の2つの工場ではタイの工業省が主催するGreen Industry ProjectにおいてLevel 3 に認定されています。Green Industry Projectは、タイの工業省が「環境を配慮した工業発展を実現するため」に設けている制度で、各企業の環境活動に応じてLevel 1からLevel 5までのレベルで認定します。Seiko Instruments (Thailand) Ltd.が取得しているのはLevel 3「Green System」で、体系的な環境マネジメントを有していることが認められました。
Seiko Instruments(Thailand)Ltd.はSIIグループの海外拠点の中でCO2排出量が一番多い拠点であり、2010年よりエネルギーに特化したマネジメントシステムを構築しています。PDCAを回しながら、既存エネルギー設備の運用状況の点検や保全、計画的な空調設備の更新、インバータ付きコンプレッサーの導入、照明のLED化などを推進してきました。今後もこのマネジメントシステムの有効性を高めながらGreen Industry Projectにおいては高いレベルの認定を目指し、エネルギーの有効利用とCO2の削減に努めていきます。